「良好胚なのに着床しない」
その原因のひとつとして、近年よく注目されているのが
Th1 / Th2 バランスと呼ばれる免疫の偏りです。
少し専門的に聞こえますが、考え方はとてもシンプルです。
Th1とTh2は“免疫の役割分担”
私たちの体の免疫には、大きく分けて2つの働きがあります。
■ Th1(攻撃モード)
- ウイルスや細菌を排除する
- 炎症を起こして異物を攻撃する
- NK細胞などを活性化させる
いわば
**「戦う免疫」**です。
■ Th2(受け入れモード)
- 炎症を抑える
- 妊娠を維持する方向に働く
- 胎児を異物として攻撃しないよう調整する
こちらは
**「守る免疫」**にあたります。
通常は、この2つが状況に応じて自然に切り替わっています。
着床にはTh2優位が必要
着床とは、
「受精卵(=半分は他人の遺伝子)」を
子宮が受け入れるプロセスです。
本来、着床期から妊娠初期にかけては
✔ Th1が抑えられ
✔ Th2が優位になる
という変化が起こります。
これを
免疫寛容(めんえきかんよう)と呼びます。
この切り替えがうまくいかず、
Th1が強いままだと、胚を“異物”として排除しやすくなります。
Th1優位の状態で起こりやすいこと
Th1が強すぎる状態では、
- 着床しにくい
- 化学流産を繰り返す
- 初期流産になりやすい
といったケースがみられることがあります。
検査では
- Th1/Th2比
- NK細胞活性
などが調べられ、
必要に応じて免疫を抑える薬が使われる場合もあります。
構造に問題がなくても、着床しない理由
子宮鏡や卵管造影などの検査で
「特に異常はありません」
と言われた場合、
大きな物理的障害は少ない
という段階までは確認できています。
それでも着床しないとき、
次に注目されやすいのが
免疫や炎症といった“機能面”です。
数値の背景にある“体の状態”
構造検査で異常がなく、
Th1/Th2比が高めだった方を振り返ると、
- 採卵周期や移植前に強いプレッシャーがかかっていた
- 治療スケジュールに追われ、気持ちが休まる時間がほとんどなかった
- 眠れてはいるものの、朝から疲労感が残っていた
といった背景を持つケースが目立ちます。
免疫の数値だけを見ると「体の問題」に感じますが、
その土台には
長期間続いた緊張状態
が重なっていることも少なくありません。
移植を重ねるほど、
「次こそ失敗できない」
という無意識の緊張が積み重なり、
体は休んでいるつもりでも、免疫系はずっと“警戒モード”のまま
という状態になることがあります。
大切なのは“検査+体全体を一緒に見ること”
Th1/Th2は数値として評価できますが、
それだけで完結する問題ではありません。
免疫は
- 自律神経
- 睡眠の質
- ストレス負荷
- 血流
と深くつながっています。
薬で調整する方法もありますが、
同時に体のベース環境を整えることで、
自然にバランスが変わっていくケースもあります。
まとめ
- Th1=攻撃の免疫
- Th2=受け入れる免疫
- 着床にはTh2優位が必要
- Th1が強すぎると着床を妨げることがある
構造検査で異常がなく、
次にどう進めばいいか迷っている方は、
「免疫のバランス」
という視点を知っておくことで、
治療の選択肢や体の整え方が見えやすくなります。
また、Th1/Th2以外にも、着床に関わる免疫系の検査はいくつかあります。
NK細胞やKIR/HLA-C、CD138など、状況に応じて確認される項目については、こちらの記事でまとめています。

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